リーダーシップの不在という本当の危機
リーダーシップとは、人々が今どこにいるかを理解し、未来を描き、それを実現する方法の発見を手助けすることです。そして何よりも、人々に成功する能力があると信じさせることなのです。
今日の世界で最も深刻な問題のひとつは、「見通し」の欠如です。人々は希望を失い、より良い明日を信じることができません。この悲観的な姿勢こそ、失敗へと続く一本道です。未来を生み出すのは、信念とコミットメントにほかなりません。
子供にとって、働き者で勤勉な父親が失業するのを見るのは悲しいことです。そんなとき、なにもかもが灰色に見え、闘うことは意味を失います。悲劇はついに、何の見返りも求めない犠牲の精神を人々がすっかり忘れてしまうところまで行き着きます。
大学を卒業しながら職に就けない人がなんと多いことか。勤勉と誠実がなんら成功につながらないとき、価値観の混乱が生じ、精神は脆弱になります。嵐のときこそ、企業の経営者や管理職は船のデッキへ下りていき、乗組員に新天地のことや、そこに到達するために必要な変化、新たな心構えなどについて話をすることが重要なのです。
こういうときこそ、リーダーの役割が何にもまして重要です。リーダーがポジティブであれば、言うことはありません。たとえば、オロドゥン(音楽を中心とした芸術活動を行なっているアフリカ系ブラジル人のグループ)は、サルバドールのカーニバルに出場するグループとしてスタートしましたが、いまや芸術集団オルドゥムとして、多くの貧しい青少年に音楽を学ぶ機会を提供するなど、素晴らしい社会的な活動を展開しています。また、偉大なサッカー選手の中には、貧しい子供たちのためのサッカースクールを開いたり、地域のコミュニティ再生のためのプロジェクトを立ち上げたりする人もいます。
こうした取り組みの多くは即効性があります。子供たちは再び明るい未来を夢見るようになり、自分の夢をかなえるために闘い始めます。確かに、彼らの大部分はプロのスポーツ選手やミュージシャンになるわけではありません。しかし、明るい未来への展望こそ、学ぶ意思やドラックを拒否する強さを与えてくれるのです。
一方、有害なのは、リーダーがネガティブに見えるときです。麻薬密売人が高価な服を身にまとい、高級車を乗り回しているケースがそうです。貧困にあえぐスラムの少年少女にとって、そうした事実には説得力があり、麻薬ビジネスに身を投じる決心をするには十分です。
リーダーの不在は、失業率が上昇し、多くの企業が倒産するような危機のときに、より深刻な影響をもたらします。品位に欠けるような行為も珍しくない混乱の中で、もし自分たちを救いたいのなら、リーダーを選ぶのです。日和見主義では混乱がひどくなるだけです。しかし、一貫性にこだわる人は、物事が悪くなろうとも、これまで通り続けるほうがいいという選択をしがちです。
社内に誹謗中傷や派閥抗争がはびこり、全体の利益より個々の利益が優先されるようになっているなら、それは会社のリーダーシップが弱体化している証拠です。誰か専門家を呼んできて、一人ひとりの社員に何が不満なのか、どうしたいのか聞いて、そこからみんなが求めている未来を描くべきです。
リーダーとは、部下のために“奉仕”し、常に耳を傾ける用意ができており、目標を追い求める際、助けになる人です。社員が夢をかなえるための支援を惜しまず、組織のための共通目標を達成するためシナジーを引き出すことができる人です。
もう一度、言います。リーダーシップとは、人々が今どこにいるかを理解し、未来を描き、それを実現する方法の発見を手助けすることです。そして何よりも(それゆえ最も難しいのは)、人々に成功への橋を渡る能力があると信じさせることなのです。

